フィールドワーク調査と博物館

私の専門は文化人類学で、伝統芸能や民俗芸能を対象にフィールドワーク調査を行っている。研究調査では、当事者の方々へのインタビュー調査や行事の観察など、いわゆる「足で稼ぐ」ことで情報収集することが中心となる。目下のコロナ禍では、なかなか人と会うことが叶わずもどかしい思いと、だからこそ限られた状況で直接会えた時、相手との対話の盛り上がりの醍醐味をひしひしと噛みしめるこの頃である。

この当事者の声を直接収集できることは、研究のおもしろさや独自性に結び付く。それと肩を並べて重要なことが、資料調査である。関連する資料から、研究対象の歴史的背景を辿り、インタビュー調査で得た情報の整合性をはかるためには欠かせない作業である。研究対象が希少であればあるほど、その関連資料は少ない。

そこでカギとなるのが、博物館・資料館の存在である。むろん、図書館等での文献調査も重要であるが、活字となっていない資料にこそ、未解明の内容が眠っていることも多く、一次資料としての重要度が非常に高い。そういった資料は、中央都市の大規模な博物館よりも、対象地域に根差した郷土博物館・資料館に収集されているため、そこでは文書のような文字資料のほか、民具なども豊富に目にすることができる。一方で、土地の行事や芸能に尽力した故人の所蔵資料が、博物館に没後寄贈された場合、調査の手が回らず雑多に保管されていることもある。誰かがアプローチしない限り、希少な資料が埋もれてしまうのである。

そもそも私が学芸員資格取得を志した動機が、調査の中でこういった眠る資料の現状を垣間見たことがあり、もし自身が学芸員ならば専門性を持った者として調査に加わることができたかもしれないのに…、というおこがましくも忸怩たる思いを抱いたこともその一つであったからだ。

博物館の業務内容を、学芸員資格の科目を学ぶいま、人員不足や雇用形態の難しさも知る。さらに、研究分野そのものの専門の博物館に学芸員として従事することは、狭き門であろう。しかし、後世に伝えるためのものとして資料を埋もらせず、消滅させずに、博物館の現状を追い続けつつ、あらゆる角度からアプローチすることも研究する者としての使命であろうと考えている。

(K.S.)

 

(夜通し行われた民俗芸能の調査を終え、目にした夜明けの光景。

コロナ以前、日々インタビューと資料館へ足を運んだ思い入れのある街並みである。)



 

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